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日本精神保健福祉学会は2011年6月に設立されました。それから2023年現在まで12年しか経っていない比較的若い学会です。この間、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、学術研究集会を一時中止(2020年)せざるを得ない時もありましたが、会員の皆さまのご尽力もあり学会活動を今日まで着々と歩んできました。
特に、学会誌『精神保健福祉学』の創刊、一般社団法人化、日本学術会議協力学術研究団体への加入承認、ソーシャルケアサービス研究協議会への加盟、公益財団法人社会福祉振興。試験センターの2度にわたる研究助成の受託、学会賞・学術奨励賞の創設、全国学術研究集会の開催などを積み上げてきました。なかでも、「精神保健福祉学の重要な概念・用語の表記のあり方に関する調査研究」は、全学会員のご理解とご協力と公益財団法人社会福祉振興・試験センターの助成金を得て500の学術用語を選定し公表することができました。また、新たな学術用語の選定を始めており、近い将来には公刊することも考えています。その際は、改めて皆さまにご協力を仰ぎたいと思います。
さて、私どもが標榜する「精神保健福祉学」は、未だ厳密には定義がなされていません。そのため、本学会名の英語表記では、「Japanese Society
for the study of Mental Health and Social Welfare」としています。大きな枠組みで述べますと、学際的な研究領域である総合科学に位置づけられる精神保健福祉に関する実学(経験科学)の体系です。会員各位の論考で精神保健福祉学とは何かを定義し、体系化を図ることが本学会の使命と考えています。
私は、精神保健福祉学を、学問としての原論、精神保健福祉政策、方法・技術、人々のニーズ、運動を含む理論と政策と実践の総体と理解しています。精神保健福祉学は、精神保健学と社会福祉学を基軸としていますが、言うまでもなく精神医学や精神障害リハビリテーション学、精神看護学、社会学、教育学、心理学、法学、文化人類学等々数多の学問や領域がクロスオーバーして学際的な学問を形成して行くと考えています。その意味で、精神保健福祉に関わる多くの専門職や現場のスタッフ、市民の皆さんにぜひ参集してほしいと願っています。
また、精神保健福祉学は、人々の精神的健康と安寧な社会生活に貢献する学問です。その意味で、それを根底から脅かす戦争や国際的な紛争に私たちは反対します。
コロナ禍という大きな傷跡は、精神保健福祉の領域でも例外ではありませんでした。多くの人々が三密を避け、学校や職場に行けずに家に閉じこもる生活が続きました。休業要請では障害者の働く場やデイケアも休むことになりました。社会的孤立や倒産や失業など生活困窮の問題も広がりました。2020年は自殺者が11年ぶりに増加しました。「籠もる生活」が続く中で、虐待やDVも一層深刻化しました。アルコールやギャンブルなどの依存症も増えました。「コロナうつ」という言葉が生まれたように、「眠れない」「不安で心がおかしくなりそう」「外出自粛でストレスがたまる」というメンタルヘルスの課題も噴出しています。元々、我が国では、精神病床に入院している入院患者数は28.4万人、1年以上の入院は17.4万人(『平成29年度
精神保健福祉資料』)という世界で類をみない入院中心主義は国が退院・地域生活支援に力を入れていてもなお続いています。
地域環境そのものの悪化でパンデミックがいつまた生じるか分からないこの時代、不確実性が広がるなかで、精神保健福祉学が社会にどのような役割を発揮できるのか、会員一同が問題意識を共有しながらこれからの学会活動を新たな高みに進めたいと思います。
どうぞ、皆様、日本精神保健福祉学会に参加してください。小さな学会ではありますが、他職種他領域の方々が普段着で参加できる学会です。若手研究者の研究活動やキャリア形成も支援していきます。お互いに学び合い、高め合い、絆を強めこの困難な時代に学会活動の一員となって頂くことを心から呼びかけるものです。 |
一般社団法人日本精神保健福祉学会
学会長 田 中 英 樹
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