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2011年6月に産声を上げた一般社団法人日本精神保健福祉学会は、設立十余年の歴史の浅い小規模学会です。この間、COVID-19の影響もあり、年に一度の学術研究集会を中止せざるを得ない時もありましたが、みなさまのご尽力のおかげで、着実に学術研究活動を積み重ねてまいりました。
本学会は、「精神保健福学」という学術的かつ実践的なテーマを追求するため、社会福祉、ソーシャルワーク、医療、看護、保健、リハビリテーションなど、様々な分野・領域、立場の研究者、実践者が参加する日本学術会議協力学術団体です。
これまでに全国各地での学術集会の開催、学術誌『精神保健福祉学』の刊行、学会賞、学術奨励賞の会員への授与、「精神保健福祉学の重要な概念・用語の表記のあり方に関する調査研究」(公益財団法人社会福祉振興・試験センターによる福祉助成の受託)などの諸活動を継続的に積み重ねてまいりました。
他方で、私どもが標榜する「精神保健学」は、未だ厳密には定義がなされておらず、学会名の英語表記は、「Japanese Society for
the study of Mental Health and Social Welfare」を採用しています。この「精神保健福祉学」を大きな枠組みで述べますと、学際的な研究領域である総合科学に位置づけられ、精神保健福祉に関する支援科学、経験科学の体系、理論と政策と実践の総体であると言えます。
加えて、今後は、会員各位のディスカッションを積み重ね、「精神保健福祉学とは何か」を定義し、その体系化を図ることが本学会の使命と考えています。また、いわゆる教育研究者のみならず、精神保健福祉に関わる多くの専門職や実践現場のスタッフ、市民のみなさんにぜひ参集してほしいと願っています。
ところで、この数年を振り返りますと、想定していなかったことが次々と起こり、私たちの生活は不安定なものとなりました。それは今日も継続中です。まさに予測不可能、先行き不透明といえます。昨今は変化が激しく、未来の予測が困難なこれからの時代を、「変動性
Volatility」:変化のスピードが速く、質・量ともに変動が大きい状況、「不確実性 Uncertainty」:将来何が起こるか予測できない状況、「複雑性
Complexity」:様々な要素が複雑に絡み合っている状況、「曖昧性 Ambiguity」:物事の因果関係があいまいになっている状況、それぞれを意味する英単語の頭文字をとり、「VUCA時代」と呼ぶようです。そのような中に、否応なしに身を置くことは、私たちを漠然とした不安に陥れ、生活を不安定にさせる可能性を高めます。
これらの状況は私たちのメンタルヘルス課題を増大させ、生活状況を悪化への負のスパイラスへの巻き込んでいきます。広く地域環境そのものが劣化、悪化する中で、同時多発的なパンデミックがいつまた起こるかわかりません。このような不確実性が拡大する時代において、精神保健福祉学が社会に対しどのような役割を果たすことができるのか、会員一同が課題意識を共有しながら、これからの学会活動を新たな高みに進めたいと思います。
どうぞ、みなさま、日本精神保健福祉学会に参加してください。小さな学会ではありますが、他分野・多領域、他職種の方々が普段着で参加できる学会です。若手研究者の研究活動やキャリア形成も支援して行きます。お互いに学び合い、高め合い、絆を強め、この困難な時代を乗り越えるための知見を共有し蓄積していきたいと考えます。
最後に、精神保健福祉学は、人々の精神的健康と安寧な社会生活に貢献できる学問であると考えます。その意味で、それを根底から脅かす戦争や国際的な紛争に私たちは断固として反対します。
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2025年 4月 13日
一般社団法人日本精神保健福祉学会
学会長 中 村 和 彦
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